【中・韓「反日ロビー」の実像/古森義久/13年10月初版】
ロビー活動というものがよくわかる一冊。アメリカはロビー活動を権利として認めています。合衆国憲法修正第一条に、「政府に対して請願をする権利」があり、国民にとっては言論や結社の自由と同じように、基本的な権利の一つとして保証されています。また「ロビイング規正法」というのもあって、登録制だったり収支や報酬を報告したり、不正を減らす工夫もされています。
読んで思ったのは、結局は声の大きいものが勝つという。たとえばイスラエル。ユダヤ人はアメリカに600万人しかいませんが、ユダヤ系の意見がアメリカの外交政策に大きく反映されます。もちろん、彼らが米国の政治、学問、ジャーナリズム、ビジネス、文化芸能の分野で大活躍しているというのもあるのですが、とにかくしつこいと。
イスラエルの要望に反対する法案を通そうとすると、深夜の自宅にひっきりなしの電話や手紙がくるそうです。「たった一通の書簡にサインするほうが、5000通の書簡に悩まされるよりずっと楽だ」上院の中でもロビーの圧力に応じないと定評のあるダニエル・イノウエの述懐です。
現在の中国のロビー活動の目標は何か。「日米離反」です。アメリカの政府や国民に、日本に対して悪いイメージを持たせることを目的とする工作をしています。日本が軍事、防衛面で米国と一体となっていることに中国は反対です。日本が日米同盟の枠内で軍事力を増強することを中国は最も嫌う。
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ただし日本とアメリカの現在の絆は堅固であり、いまの日本の外交や防衛のあり方も他国の批判を受ける点は少ない、だから日本の印象を悪くするには、「過去の戦争にからむ、いわゆる歴史問題を利用することが、とくに大きな効果を生む」と中国は判断してるようです。なお、中国の対米ロビー公式金額は4年間で10倍近くに急増しています。
「敵の最も重要な同盟国が敵よりも有力な場合は、この同盟国に有効な打撃を加える。」中国のロビー活動は、クラウゼヴィッツの戦争論を地で行ってますね。
<2005年・反日デモの真因>
中国の反日デモは凄まじかった。原因は「日本の国連安保理常任理事国入りへの反対」。中国は日本が国連でもなんでも、国際的な舞台で影響力を拡大することには反対する。
<慰安婦問題は韓国より中国の後押し>
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韓国は、中国のように米国内の反日組織にパワーがない。一応170万人の在米韓国人は中国系と違って一枚岩で動くが、基本的にはごく少数の活動家が単発で動くだけである。
たとえば執拗に米国で従軍慰安婦の賠償を求めた「ワシントン慰安婦問題連合」と、韓国系アメリカ人社会のつながりは出てこない。むしろ中国系反日組織の「世界抗日戦争史実維護連合会」との関係が密接で、グレンデール市の慰安婦像でも中国系が全面支援していた。
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読んで思ったのは、日本は淡白すぎるということ。ハングリーさがないとか、メンタルが違うとか、そういうのもあるとは思いますが、モチベーションの違いだと思います。
モチベーションの源泉は愛国心で、愛国心の源泉は教育でしょう。教育の中でも愛国心を育むのは歴史教育です。そこに敵対活動をする国々が介入しすぎです。内政干渉のレベルを超えて、国体の破壊活動だと思います。
経済の世界はこれから40億人を占めるアジアが伸びてきます。そこに注視するアジアファーストでいい。だけど世界の世論はアメリカで作られる。ロビー活動は人脈です。人脈の形成には時間がかかります。
これからは世論形成(アメリカ)と、ビジネス(アジア)と両方を睨んだ人材配置が必要になってくる。ワシントン駐在の著者は、まだまだアメリカにも優秀な人材を長期的に張り付かせるべきだ、そう言いたいのだと思います。
ビルエバンストリオでイスラエル♪ジャズ史上に輝くリバーサイド4部作の「Explorations」から。Youtubeのbはスコット・ラファロじゃなくてすいません。彼は「ワルツフォーデビー」をヴィレッジヴァンガードで録音した11日後、1961年7月6日に自動車事故で亡くなっています。